問題1
11 歳男児。反応性に肥大した腋窩リンパ節の組織像を示す(図 1、図 2、図 3)。図 3 の矢 印で示す、胚中心に存在し貪食能を持つ細胞は何か。
1. centrocyte
2. centroblast
3. sinus histiocyte
4. follicular dendritic cell
5. tingible body macrophage
解説
11 歳男児。反応性に肥大した腋窩リンパ節の組織像を示す(図 1、図 2、図 3)。図 3 の矢 印で示す、胚中心に存在し貪食能を持つ細胞は何か。
1. centrocyte
2. centroblast
3. sinus histiocyte
4. follicular dendritic cell
5. tingible body macrophage
リンパ濾胞に存在する大型のマクロファージで死んだ細胞を貪食している。断片化した核酸が色濃くドット状に染まるのでtingible (可染性)と言われる。これが見られたときは通常反応性腫大のリンパ節である、と判断する。濾胞内で免疫応答が始まり、胚中心が形成される過程で出現。B細胞の増殖とアポトーシスが胚中心で起こっている中で、死んだ細胞を急速に取り込んで異常な反応を抑制していると考えられている。
参考
問題2
問題 2
次のうち有棘細胞癌について正しいものを 2 つ選べ。
1. 抗 PD-1 抗体の保険適用がある。
2. 遠隔転移例に対して標準治療は確立していない。
3. 長径 1 cm 以上の場合、センチネルリンパ節生検の適用がある。
4. 潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減にメトロニダゾールゲルを用いる。
5. 長径 3 cm 以上の場合、所属リンパ節の予防的郭清が推奨される。
解説
問題 2
次のうち有棘細胞癌について正しいものを 2 つ選べ。
1. 抗 PD-1 抗体の保険適用がある。
高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High(Microsatellite Instability-High)を有する場合にはあらゆる固形がんでペンブロリズマブを投与可能。ちなみに有棘細胞癌では頻度は少ない。
2. 遠隔転移例に対して標準治療は確立していない。
FP療法などを行うことが多いが、標準治療とされているわけではない。
3. 長径 1 cm 以上の場合、センチネルリンパ節生検の適用がある。
2cm以上のリンパ節に対してセンチネルリンパ節生検の適応あり。皮膚科領域ではメラノーマ、有棘細胞癌、乳房外パジェット病、メルケル細胞癌でも保険適応となっているが、大きさに指定があるのは有棘細胞癌のみ。ちなみにセンチネルリンパ節生検の加算は5000点。
4. 潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減にメトロニダゾールゲルを用いる。
がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減、他の感染性の潰瘍にも使用できそうだが、悪性腫瘍に使用は限定されている。他にも酒さに保険適応あり。
5. 長径 3 cm 以上の場合、所属リンパ節の予防的郭清が推奨される。
基本的に皮膚科領域の癌腫では予防的郭清は推奨されない。
参考
問題3
問題 3
尋常性白斑に合併しやすい疾患を 2 つ選べ。
1. 橋本病
2. B 型肝炎
3. I 型糖尿病
4. 鉄欠乏性貧血
5. アトピー性皮膚炎
解説
問題 3
尋常性白斑に合併しやすい疾患を 2 つ選べ。
1. 橋本病
汎発型の尋常性白斑では抗サイログロブリン抗体、抗ペルオキシダーゼ抗体が出現することがある
2. B 型肝炎
肝炎では慢性C型肝炎に合併することがある
3. I 型糖尿病
I型糖尿病でも抗GAD抗体が出現することがある
4. 鉄欠乏性貧血
悪性貧血を合併することがある
5. アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎でも脱色素斑が見られることがあるが、尋常性白斑ではなく、炎症後の色素脱失。アトピーに関連するものとしては円形脱毛症を合併することがある
尋常性白斑の合併症として、自己免疫性甲状腺機能異常、膠原病、シェーグレン症候群、慢性C型肝炎、円形脱毛症、悪性貧血、アジソン病、重症筋無力症などがある
参考
問題4
問題 4
図 4 に示す疾患で予後に関連するとされる因子はどれか。2 つ選べ。
1. 年齢
2. 性別
3. 部分生検
4. 腫瘍の厚さ
5. 腫瘍の大きさ
解説
問題 4
図 4 に示す疾患で予後に関連するとされる因子はどれか。2 つ選べ。
1. 年齢
70歳以上で予後不良となるが発症年齢は平均 74.48 歳なので基本的に予後不良
2. 性別
予後に関係ないが、欧米、日本ともに男女比2:1と男性がやや多い傾向
3. 部分生検
生検すると余計に増悪すると教わったことがあるが、病理を確認することは必要であるし、予後因子には関係ない。昔境界不明瞭な病変にマッピング生検までして送ってきた人もいたが、そこまでする必要はないと思う 。
4. 腫瘍の厚さ
thicknessが関係あるのはメラノーマの時
5. 腫瘍の大きさ
海外では境界明瞭であることが多いので単発5cm以下では切除されていたが、日本人は比較的大きめの境界不明瞭な病変が多いため、初手からCCRTを行うことが多い。
高齢者の頭部に紫斑と結節を伴っているため。第一に血管肉腫を考える。頭部血管肉腫については初版にアルゴリズムなども記載されているので参考程度に見ておくと良い
AJCCでは血管肉腫をTNM分類に単純に当てはめることは難しいとされているが、ガイドライン初版のものを記載しておくので参考までに
予後不良に関与する危険因子に関しては,70 歳以上,壊死,腫瘍サイズ,腫瘍深達度,類上皮様の形態などが予後不良因子としてあげられている
参考
問題5
問題 5
37 週、経膣分娩で出生した女児。出生体重 2,904 g、Apgar score 9 点。出生時に全身の著
明な角質肥厚、亀裂を認めた(図 5、図 6)。この疾患について誤りはどれか。
1. 指定難病である。
2. 精神発達遅滞を伴う。
3. エトレチナートが有効である。
4. 常染色体潜性(劣性)遺伝である。
5. ABCA12 遺伝子の変異により発症する。
解説
問題 5
37 週、経膣分娩で出生した女児。出生体重 2,904 g、Apgar score 9 点。出生時に全身の著
明な角質肥厚、亀裂を認めた(図 5、図 6)。この疾患について誤りはどれか。
1. 指定難病である。
先天性魚鱗癬の1病型として道化師様魚鱗癬が指定難病となっている
2. 精神発達遅滞を伴う。
いわゆる魚鱗癬症候群では精神発達遅滞を伴うことが多いが道化師様魚鱗癬では正常
3. エトレチナートが有効である。
出生後早期(文献によっては生まれた当日より)に1mg/kg/dayを投与すると角化が正常になる、という報告がちらほら見られる
4. 常染色体潜性(劣性)遺伝である。
5. ABCA12 遺伝子の変異により発症する。
顆粒層に含まれる層板顆粒の膜上に存在し、セラミドの原料となる脂質を取り込む役割がある。層板顆粒から角質細胞間にセラミドを放出していく。ちなみに顆粒層のケラトヒアリン顆粒にはプロフィラグリンが蓄えられていて、保湿に役立つ
臨床診断は道化師様魚鱗癬で皮膚が分厚く割れており、眼瞼や口唇の反転が特徴的。出生時のコロジオン児としての写真は全身の白色の分厚い角化物質であるコロジオン膜が印象的だが、これは1−2日で脱落し、その後は細かい白色鱗屑と紅皮症がメインになってくる。
魚鱗癬症候群は網羅するのが大変なのであたらしい皮膚科学を読んでおけばいいと思う。
参考
あたらしい皮膚科学
問題6
問題 6
非結核性抗酸菌症について、正しい記載を 2 つ選べ。
1. T-SPOT は陰性である。
2. 通常はヒトからヒトへ感染しない。
3. 標準的治療は感受性のある薬剤による単剤療法である。
4. いわゆる MAC(M. avium complex)症には皮膚病変が多い。
5. 培養検査は 37℃と 25℃前後の室温で行うことが推奨される。
解説
問題 6
非結核性抗酸菌症について、正しい記載を 2 つ選べ。
1. T-SPOT は陰性である。
ELISPOT法と呼ばれていて、全血からPBMC(末梢血単核球)を分離→抗IFNγ抗体が張り付いているマイクロプレート内で、PBMCと結核菌特異抗原を反応させる(過去に感染していればPBMCがIFNγを産生する)→産生したIFNγがマイクロプレート中の抗IFNγ抗体と反応する→IFNγを標識する2次抗体を加えると→IFNγを産生したPMBCの痕跡がスポット状に見ることができる。一方で従来のQTFは採血管内に抗原が塗布されているのでその中で抗原刺激を行い産生したIFNγをサンドイッチELISA法で定量している。
反応させている結核菌特異抗原であるESAT-6 および CFP10はBCG ワクチンや結核菌以外のほとんどの抗酸菌とは交差性は示さないが,M.kansasii,M.szulgai,M.marinum,M.gordonae 感染では陽性の結果を示すので注意。
2. 通常はヒトからヒトへ感染しない。
結核と異なりヒトからヒトへ感染しないので、届け出もしないし、隔離もしないし、入院することも少ない。しかしながら、M. abscessusはヒトから感染する可能性があるとの報告あり。(PMID: 27846606)
3. 標準的治療は感受性のある薬剤による単剤療法である。
抗酸菌症は抗菌薬の内服治療が長期になり,薬剤感受性が低い菌が多いことから,耐性菌を出現させないため必ず多剤(2 剤以上)で治療を行う。
4. いわゆる MAC(M. avium complex)症には皮膚病変が多い。
MACは皮膚病変も呈するが、肺病変が多い。皮膚病変を呈するNTMとしてM. Leprae, M. marinum, M. ulcerans, m. avium, M. haemophilum, M. Chelonae, M. abscessusなどがある
5. 培養検査は 37℃と 25℃前後の室温で行うことが推奨される。
NTMでは37℃で発育しにくい菌種もあり、低温で発育するものもあるため2通りの温度設定にする。ちなみにハンセン病の原因であるM. lepraeは培養できない。
非結核性抗酸菌症にはハンセン病と皮膚結核を除くすべての抗酸菌症が含まれる。
参考
問題7
問題 7
サザンブロット法は何を検出する検査か。
1. DNA
2. RNA
3. 脂質
4. 糖鎖
5. タンパク質
解答
問題 7
サザンブロット法は何を検出する検査か。
1. DNA
2. RNA
ノーザンブロット法のこと
3. 脂質
4. 糖鎖
5. タンパク質
ウエスタンブロットのこと
サザンブロットはエドウィン サザンが考案したため開発者名が由来となっている (サザンは人の名前なので記載するときはSouthernで大文字)。その後開発されたノーザンブロット、ウエスタンブロットがサザンにちなんで方角の名前がつけられた。
ブロットとは実験においてはDNA産物などをメンブレンに転写する操作を指す。
リンパ腫かどうかのカンファレンスで、遺伝子再構成を提出した、といった際に、サザンも提出したのか?PCRだけか?なんて問答があったが、下っ端だった頃はなんのことかよくわかっていなかったのが懐かしい。
参考
問題8
問題 8
ダーモスコピー像(図 7)を示す。診断はどれか。
1. Melanoma
2. Spitz’s nevus
3. Dysplastic nevus
4. Miescher’s nevus
5. Congenital melanocytic nevus
解答
問題 8
ダーモスコピー像(図 7)を示す。診断はどれか。
1. Melanoma
parallel ridgeのパターンではないため今回は違うと判断。
2. Spitz’s nevus
starburst pattern が特徴的
3. Dysplastic nevus
臨床的にも組織学的にも、ちょっと正常とは言い難い場合。ダーモスコピーもmulticomponent patternとなることがありしばしばカンファレンスで議論になる。今回はきれいなcrista dotted patternなので違うと判断。
4. Miescher’s nevus
臨床的には頭頸部に1cmまでのドーム状の結節を作っていて毛が生えていることがある。ダーモスコピーでは有毛部のパターンになるため。今回は違うと考えられる。
5. Congenital melanocytic nevus
double line variant of parallel furrow patternおよびcrista dotted patternはより若年で見られる傾向があるため、先天性母斑との関連があると考えられている。PMID: 24520515
Parallel furrow patternの亜型であるCrista dotted variantで、掌蹠に見られるパターン
参考
Age-related prevalence of dermatoscopic patterns of acral melanocytic nevi
Dermoscopic patterns of benign volar melanocytic lesions in patients with atypical mole syndrome
ダーモスコピーのすべて
問題9
問題 9
70 歳男性。発熱・鼻部腫脹・多発関節痛に伴い体幹上肢に多数の紅斑が生じてきたため受
診。初診時、一部に環状を呈する紅斑が体幹四肢に多数散在していた(図 8)。鼻部と両耳介
に発赤腫脹を認めた(図 9)。CRP は軽度上昇、抗 II 型コラーゲン抗体は高値。背部紅斑か
らの生検像(図 10)および抗 CD68 抗体を用いた免疫組織染色像(図 11)を示す。最も考え
られる病名はどれか。
1. Linear IgA dermatosis
2. Histiocytoid Sweet syndrome
3. Erythema annulare centrifugum
4. Granulomatosis with polyangiitis
5. Erythema exsudativum multiforme
解答
問題 9
70 歳男性。発熱・鼻部腫脹・多発関節痛に伴い体幹上肢に多数の紅斑が生じてきたため受
診。初診時、一部に環状を呈する紅斑が体幹四肢に多数散在していた(図 8)。鼻部と両耳介
に発赤腫脹を認めた(図 9)。CRP は軽度上昇、抗 II 型コラーゲン抗体は高値。背部紅斑か
らの生検像(図 10)および抗 CD68 抗体を用いた免疫組織染色像(図 11)を示す。最も考え
られる病名はどれか。
1. Linear IgA dermatosis
浸潤しているのは組織球よりも好中球などが多い。DIFでIgAのが基底膜に線状に沈着する
2. Histiocytoid Sweet syndrome
再発性多発軟骨炎にスイート病を合併する症例が含まれる。PMID: 26474089
3. Erythema annulare centrifugum
真皮浅層の血管周囲のリンパ球浸潤、coat-sleeve like appearanceと表現したりもする。
4. Granulomatosis with polyangiitis
PR3-ANCAが上昇、E (ear 上気道)、L(lung 肺)、K(kidney 腎臓) 通常E–>L–>Kの順番に症状が出現する。
5. Erythema exsudativum multiforme
多形滲出性紅斑のこと。
耳と鼻が主張していて抗II型コラーゲン抗体が要請なので再発性多発軟骨炎があるのはわかりそうだが、relapsing polychondritisが選択肢にないためちょっと困る。CD68が組織球を染めているとわかっていればなんとなく2が正解だと想像できる。
参考
Histiocytoid Sweet syndrome: a novel association with relapsing polychondritis
問題10
問題 10
無汗症の評価に通常用いられることのない検査法は次のうちのどれか。
1. Minor 法
2. ヨード紙法
3. 重量計測法
4. サーモグラフィー
5. 定量的軸索反射性発汗試験
解答
問題 10
無汗症の評価に通常用いられることのない検査法は次のうちのどれか。
1. Minor 法
全身にヨードアルコール、ひまし油+コーンスターチなどの混合物を塗り、15分程度踏み台昇降などの運動をさせる。発汗部位はヨウ素デンプン反応により黒色になる。
2. ヨード紙法
ゼロックス紙にヨードを加え、瓶で1週間保存後に茶褐色に変色した紙を使用する。発汗部位に触れると黒色に変色する。手掌、足底に適していて、平坦でない皮膚には不向き
3. 重量計測法
重量を計測したろ紙を付着させたパウダーフリーのビニール手袋を5分間装着し、汗を含んだろ紙の重量を計測。最初の重量との差から発汗量を測定する。通常多汗症の検査で用いる
4. サーモグラフィー
発汗のない部位に一致して体温上昇が見られる。温熱発汗試験と並行して行うとよい。
5. 定量的軸索反射性発汗試験
いわゆる QSTART: quantitative sudomotor axon reflex testのこと。アセチルコリンをイオントフォレーシスにより皮膚に導入し、軸索反射による発汗を定量する。IPSFでは発汗が誘発されない
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