SNSフォローボタン
KIをフォローする

令和4年度 2022年度 皮膚科専門医試験 解答解説 問題 79

問題

問題 79
60 歳女性。沖縄県出身。肩甲骨下部の皮下結節を画像検査で指摘された。HE 染色(図 36、
図 37)とエラスチカ・ワンギーソン染色(図 38)を示す。コッサ染色は陰性であった。診断
は何か。
1. Elastofibroma
2. Spindle cell lipoma
3. Pseudoxanthoma elasticum
4. Elastosis perforans serpiginosa
5. Annular elastolytic giant cell granuloma

解答

問題 79
60 歳女性。沖縄県出身。肩甲骨下部の皮下結節を画像検査で指摘された。HE 染色(図 36、
図 37)とエラスチカ・ワンギーソン染色(図 38)を示す。コッサ染色は陰性であった。診断
は何か。
1. Elastofibroma
世界の報告例のの半数以上が琉球諸島の症例で肩甲骨下部と胸壁の間の深部軟部組織に発生するため、おそらく典型的な症例なんだと思います
2. Spindle cell lipoma
少なくともEVGが陽性になることはない。病理では線維粘液性間質内に、さまざまな大きさの脂肪細胞と無味の紡錘細胞がほぼ同量混在しており約 50% の症例で脂肪芽細胞が見られる。通常の脂肪腫だと脂肪小葉の間質は狭いが、そこに紡錘形の細胞が入り込む感じ。その間質にコラーゲンが入り込んでいると特異度が高い。
3. Pseudoxanthoma elasticum
皮下にカルシウムが沈着するのでコッサ染色が陽性になるのが特徴。ABCC6遺伝子異常による。
4. Elastosis perforans serpiginosa
経表皮的に弾性線維が排出される疾患で、Down症に合併したり、D-ペニシラミン内服などに合併することがある。病理は経表皮排出がないと診断できないし、皮下結節として見つかることはあまりないと思います。
5. Annular elastolytic giant cell granuloma
弾性線維が貪食されているので、EVG染色はむしろ陰性。日光暴露により発症しやすい。基礎疾患で重要なのは糖尿病。巨細胞がみえる。

図36からは真皮膠原線維の線維化などがわかり、図37からは真皮内での出血(解像度が粗いのでもしかしたら好酸性の断片化した弾性線維かもしれません)がわかる。図38のエラスチカワンギーソンで弾性線維が黒紫色に染まっていることがわかる。

Elastofibroma

好発年齢高齢者や肉体労働者に多い
好発地域日本ではほぼ沖縄
原因かつては遺伝的要因が考えられていたが、現在では反復する軽微な外傷や肉体労働によるものとされている
男女比1:1.25-13
好発部位肩甲骨下部と胸壁の間の深部軟部組織に発生
自覚症状疼痛はない
肩甲骨の弾発音、運動制限、肩の内外転運動時のカチカチ感などで受診することがおおい
病理EVG染色では丸みを帯びたビーズ状の弾性線維が見られる
治療完全切除により、再発はなく、悪性化もしない

参考

Elastofibroma in Okinawa. A clinicopathologic study of 170 cases

Elastofibroma dorsi: Clinical evaluation of 61 cases and review of the literature

Fibroblastic / myofibroblastic Elastofibroma

リンク

試験問題のリンク図表のリンクです

解答一覧はこちら

コメント