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令和4年度 2022年度 皮膚科専門医試験 解答解説 問題 76

問題

問題 76
次のうち Bowen 病について誤っているものを 2 つ選べ。
1.慢性鉛中毒で多発する。
2.凍結療法に保険適用がある。
3.外科的切除が第一選択である。
4.イミキモド外用に保険適用がある。
5.手指の Bowen 病から HPV16/31/33 などが検出される。

解答

問題 76
次のうち Bowen 病について誤っているものを 2 つ選べ。
1.慢性鉛中毒で多発する。
ボーエン病は慢性砒素中毒患者に多発する、以下参照。一方慢性鉛中毒では不可逆性の認知障害、末梢神経障害、腎機能障害が主症状
2.凍結療法に保険適用がある。
皮膚腫瘍冷凍凝固摘出術(一連につき)で算定できる。で悪性腫瘍を凍結療法で治療して、病理を出さないのは、取り切れているかわからないので、医師側からしたらちょっと不安
3.外科的切除が第一選択である。
表皮内癌なので、確実に切除すれば完治する。ガイドラインによれば、マージンは1-4mm推奨
4.イミキモド外用に保険適用がある。
イミキモドは表在型の基底細胞癌やボーエン病に有効であるとされるが、保険適応外。多発している場合などは症状詳記などで対応出来るかもしれない。イミキモドの保険適応は外性器、肛門周囲の尖形コンジローマと顔面および頭部の日光角化症に適応あり。用法も若干異なるので以下参照
5.手指の Bowen 病から HPV16/31/33 などが検出される。
特に爪部ボーエン病ではHPV16が56%。外陰部の丘疹で病理がボーエン病になる場合、ボーエン様丘疹症の名前になりHPV16が多い

Bowen病

有棘細胞癌の表皮内病変で限局しているもの

BDの3−5%がSCCに移行する。

陰部の丘疹で病理がボーエンだとボーエン様丘疹症になったり、亀頭の局面で病理がボーエン病だとケイラー紅色肥厚症みたいに名前が変わってくる。

病理

病変は表皮内に限局(真皮網状層以下に病変があるとSCCになる)

表皮が全層性に配列の乱れ

核分裂像などあり

基底層は保たれる:eyeliner sign

おまけ:日光角化症では基底層の配列の乱れがみられるが、これをinvers eyliner signと言ったりするらしい

dyskeratotic cells

多核巨細胞に見える:clumping cells

solar elastosisはあってもなくてもよい

ダーモスコピー像

scaly surface:カサカサを反映。これが以下の血管所見と同時に存在するとBDの可能性は高くなる

glomerular (coiled) vessels:腎糸球体を模倣し、クラスター状に分布、曲がりくねった血管

clusted vascular pattern: 血管がクラスター状に局所的に非対称に分布

など。

ヒ素暴露によるボーエン病

  • 多発性
  • 非露光部など体幹部に多い
  • 潜伏期間は15-30年と長い
  • 30-40歳でも発症する
  • 大量暴露による悪性腫瘍の発生率は上昇するが、一方で少量投与でも発症する可能性あり
ヒ素の侵入経路
  • 医療関係
    亜細亜丸、フォーレル水、サルバルサン、ソラルソンなどが1970年初頭まで乾癬や菌状息肉症に対して使われていた。
  • 職業関係
    皮革の防腐剤として使用されていたためかつて皮革関係の仕事をしていた場合。ヒ素鉱山で働いていたり、銅の精錬にヒ素が使用されていたため、金属鉱山に従事していると、ヒ素に暴露されている可能性が高い
  • 環境によるもの
    ヒ素鉱山周辺に住んでいた、井戸水の汚染、ヒ素を含む農薬を使用していたなど

ヒ素暴露歴はカンファレンスとかでよく聞かれました。

ヒ素による皮膚症状

急性期慢性期
汗疹様皮疹
落屑
びまん性色素沈着
点状白斑:比較的見られやすいため役にたつ
掌蹠の点状角化症 (ヒ素角化症)以下2パターン
 びまん性の角質肥厚
 鶏眼様の小結節が多数
脱毛
爪の変化 (Mee線:爪に横走する淡い白線が一本あり)

ヒ素による発がんの理由

ヒ素が直接発がん物質として働くのではなく、ヒ素がSH基に親和性があり、DNAやRNA合成に必要な酵素を不活化させる、細胞のプリン塩基を障害するためとされているが、実証されているわけではない。

参考

微量元素と皮膚疾患

clinical derma

皮膚悪性腫瘍ガイドライン第 3 版‌ 有棘細胞癌診療ガイドライン 2020

Squamous cell carcinoma in situ / Bowens disease

リンク

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