問題
問題 74
穿孔性皮膚症の組織学的診断に有用な染色法はどれか。2 つ選べ。
1. ズダン III 染色
2. アザンマロリー染色
3. トルイジンブルー染色
4. フォンタナマッソン染色
5. エラスチカ=ワンギーソン染色
解答
問題 74
穿孔性皮膚症の組織学的診断に有用な染色法はどれか。2 つ選べ。
1. ズダン III 染色
脂肪を染色するのに使用し、中性脂肪がオレンジっぽく見える。他の脂肪の染色はオイルレッド染色など
2. アザンマロリー染色
膠原線維が青色に染まる。穿孔性皮膚性だと表皮を膠原線維が縦に走る経表皮排出(transepidermal elimination)の像がわかりやすいが、典型的なものは特殊染色しなくてもすぐわかるはず
3. トルイジンブルー染色
皮膚領域では肥満細胞を染めるときによく用いる。肥満細胞や好塩基球はトルイジンブルー染色でトルイジンブルーの青でなく赤紫に染まり、これを異染性(metachromasia)という。他にも粘液や軟骨などは色素が本来有していない赤色調が出現して赤紫色に染まる。メタクロマジーの反応機構は-SO3H,-COOHなどの酸性基を有する酸性粘液多糖類や-PO4を有する核酸とアニリン系塩基性色素がイオン結合して立体構造が変化するためだと思います。トルイジンブルー染色液にはpHの指定 (pH2.5, 4.1, 7.0など)があるため、まれに病理部で依頼するとpHはどうしますか?と聞かれることがあるが、見たいものが肥満細胞や好塩基球であればどれでもよい
4. フォンタナマッソン染色
もともとはアンモニア銀溶液でカルチノイドを染めたのが始まり。皮膚科領域ではメラニンを染めるときによく使う。 メラニンやリポフスチン、銀親和性細胞を黒~茶褐色に染めたり、悪性黒色腫のメラニンや内分泌細胞の検索が出来たり、クリプトコッカスなど一部真菌も染められるが、加温が必要な染色法。好銀性と銀還元性を併せ持つときに、黒く染まる。
5. エラスチカ=ワンギーソン染色
弾性線維を染めるときに使用する。特に静脈侵襲の有無などはHEでわかりにくいので、EVG染色で弾性線維を指標にしながら評価することが多いです。
特殊染色一覧
アザン染色 | 膠原線維。濃青色 | |
エラスチカワンギーソン染色 | 弾性線維:黒紫色 | |
ズダンIII オイルレッド | 脂肪滴:オレンジ | |
PAS染色 | グリコーゲン:赤紫 | 肥満細胞穎粒、アメーバ、真菌も染まる。なのでPASとグロコットがセットでされることもある |
アルシアンブルー染色 | ムチンなど:青色 | |
トルイジンブルー染色 | 粘液、肥満細胞穎粒、軟骨基質:赤紫色 | 染色液のpH(2.5,,4.1,7.0)の選択により酸性粘液多糖類の鑑別も可能 |
コンゴーレッド ダイレクトファストスカーレット染色 ダイロン染色 | アミロイド:オレンジ | |
フォンタナマッソン | メラニン:茶褐色 | |
コッサ染色 | カルシウム沈着部:黒褐色 | 皮膚科ではPXEでよく行われる |
チールネールゼン染色 | 抗酸菌:赤っぽい | |
グロコット染色 | 真菌:黒 | グリコーゲン、粘液も黒染される |
ワルチンスターリー染色 | 梅毒スピロヘータ:黒 | |
ギムザ染色 パパニコロウ染色 | 細胞診などで用いる 核:赤紫 | パパニコロウ染色は湿固定であることから,塗抹された細胞すべてが比較的 均一に,そして短時間で固定される。 一方,ギムザ染色では乾燥により固定を 行うため厚く塗抹された標本では乾燥までに時間がかかり,標本全体が同じよ うな条件で固定されにくい。 |
ベルリンブルー染色 | ヘモジデリン:青 | 3価の鉄イオンに鋭敏に反応し2価の鉄には反応ない |
墨汁染色 | 莢膜を有する真菌:背景が黒く染まって微生物周囲の莢膜が輪(halo)にみえる | 細胞懸濁液(例,髄液沈渣)中のCryptococcus neoformansやその他の莢膜を有する真菌の検出に主に用いられる |
穿孔性皮膚性
病理で経表皮排出像があり、排出されているものに応じて病名がつけられている
1 表皮から膠原線維:後天性反応性穿孔性膠原症
掻痒が強くて糖尿病と慢性腎臓病の合併が多い。
糖尿による膠原線維の糖化産物が色々経て基底膜のMMP9などのコラーゲン分解酵素を増加させるため、掻爬により基底膜が破綻して経表皮排泄が起こるなどの仮説がある。リンク参照
2 弾性線維:蛇行性穿孔性弾性線維症
Down症に合併したり、D-ペニシラミン内服などに合併することがある
3 角質:キルレ病
糖尿病と慢性腎臓病の合併が多い。
4 毛包から膠原線維:穿孔性毛包炎
糖尿病と慢性腎臓病の合併が多い。マルチキナーゼ阻害薬、BRAF阻害薬投与中などに見られることがある
診断基準
後天性反応性穿孔性膠原症では
①病理組織所見としてカップ状の表皮陥凹の中に膠原線維の排出像
②臨床像は,中央に角栓が付着した中心臍窩を有する多発性の角化性丘疹または結節
③ 18 歳を過ぎてからの発症
上記3つを満たす必要があるがその他3つは病理のみで診断できる
参考所見としてケブネル現象及び掻痒が見られる
参考
穿孔性皮膚症(perforating dermatosis)の診療の手引き
リンク
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