問題
問題 56
28 歳男性。出生時より打撲部に隆起性の血腫を形成するエピソードを繰り返していた。前腕の皮膚をつまむと、図 29 に示す所見を認めた。なお、身長は 170 cm で、四肢の長さは正常だった。明らかな毛髪異常は認めなかった。最も考えられる疾患はどれか。
1. Cutis laxa
2. Menkes disease
3. Marfan syndrome
4. Ehlers-Danlos syndrome
5. Pseudoxanthoma elasticum
解答
問題 56
28 歳男性。出生時より打撲部に隆起性の血腫を形成するエピソードを繰り返していた。前腕の皮膚をつまむと、図 29 に示す所見を認めた。なお、身長は 170 cm で、四肢の長さは正常だった。明らかな毛髪異常は認めなかった。最も考えられる疾患はどれか。
1. Cutis laxa
皮膚弛緩症ともいう。常染色体優性遺伝。問題の症例のように皮膚が伸びるというよりは余剰皮膚が多くてたるんでいるという感じ。エラスチンやフィブリン5遺伝子の変異が知られている。皮膚以外の症状として、ヘルニア、心臓弁の形態異常(僧帽弁および三尖弁の余剰)、心血管系の症状(肺動脈弁狭窄症と大動脈および動脈の拡張および蛇行)、消化管憩室、肺気腫など
2. Menkes disease
銅輸送ATPaseの1つであるATP7A遺伝子の変異により、銅の腸管での吸収障害がおこる。X劣性遺伝。頭髪は脱毛・色素脱毛(赤茶けている)・短く捻じれた毛などが特徴的でkinky-hairといわれる。ほかの症状として皮膚・関節の過伸展、筋力低下、膀胱憩室、骨粗鬆症、骨折、下痢など
3. Marfan syndrome
全身の結合組織の働きが弱く、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈瘤、心臓の弁がうまく閉じないなどの症状が見られる
4. Ehlers-Danlos syndrome
ちなみにチェーンソーマンのマキマの声の人が関節型のEDSと公表している。妊娠合併症も多く、女性患者の場合は妊娠の管理も重要になる。
5. Pseudoxanthoma elasticum
これが解答になるときは間擦部のみかんの皮様の特徴的な皮疹やHEやコッサ染色の写真が出るはず。弾性繊維が固くなる疾患なので、むしろ皮膚は伸びにくいはず。常染色体劣性遺伝、ABCC6遺伝子変異が原因。
Ehlers-Danlos syndrome
EDSはコラーゲンの産生及び成熟に関する先天異常により結合組織が脆弱になる遺伝性疾患とされる
分類
新分類では以下の型に分類される
- 古典型: V型プロコラーゲンの異常、常染色体優性遺伝、原因遺伝子は、COL5A1 COL5A 関節の過伸展、創傷治癒遅延、関節可動性亢進を呈する。
- 関節型:常染色体優性遺伝を示すが、原因遺伝子は不明である。柔らかい皮膚、関節可動性亢進を認める。
- 血管型: Ⅲ型プロコラーゲンの異常、常染色体優性遺伝、原因遺伝子は、COL3A1 薄い透過性の皮膚、動脈・腸管・子宮破裂、易出血性を認める。
- 後側彎型: リジンハイドロオキシラーゼの先天的欠損が原因の常染色体劣性遺伝病である。出生時の筋緊張低下、全身性弛緩性関節、先天性進行性脊椎後側彎、眼球破裂などを認める。
- 多発関節弛緩型:I型プロコラーゲンのN-プロテイナーゼ切断部位の異常。常染色体優性遺伝、原因遺伝子は、COL1A1 COL1A2 反復性亜脱臼を伴い全身性の関節可動性亢進、両側先天性股関節脱臼を認める。
- 皮膚弛緩型:プロコラーゲンN-プロテイナーゼの欠損が原因、常染色体劣性遺伝。原因遺伝子は、ADAMTS2 皮膚の脆弱性、たるんだ皮膚を認める。
症状
5000出生あたり1人
結合組織が脆弱なため、皮膚が伸びやすく、関節も柔らかいまた、結合組織が脆弱なことにより、骨格、血管系に様々な合併症がある
軽いけがでも傷口が大きく開いてしまう、そのため傷跡が残りやすい
捻挫や脱臼が頻繁に起こる
側弯症、内反足、偏平足が見られる
ヘルニア、憩室、消化管穿孔などもおこる
心臓弁が脆弱になる
早産になりやすい、妊娠合併症として子宮破裂、傷が治りにくいため、帝王切開や会陰切開でもんだいが生じやすい、胎児がEDSの場合は前期破水しやすいなどなど
診断基準
各病型によって診断基準が異なる。ここでは古典型の診断基準を載せておく
A.症状
<大基準>
1.皮膚過伸展性(※別表1参照)・萎縮性瘢痕(※別表1参照)、
2.関節過動性(※別表2参照)
<小基準>
1.易出血性
2.柔らかい皮膚
3.皮膚脆弱性(裂傷しやすい)
4.軟属腫様偽腫瘍
5.皮下球状物
6.ヘルニア
7.内眼角贅皮
8.関節過可動による合併症(捻挫、脱臼・亜脱臼、疼痛、扁平足)
9.家族歴
B.遺伝学的検査
COL5A1、COL5A2、COL1A1、AEBP1遺伝子等の病原性変異
<診断のカテゴリー>
Definite: A症状のうち2つ以上を認め※、Bに該当する場合
Probable: A症状のうち、大基準の全て、及び小基準のうち3つ以上を認める場合
※大基準、小基準のいずれの項目でも可とする。
皮膚過伸展 | |
0点 | 3cm未満 |
1点 | 3-4cm |
2点 | 4-5cm |
3点 | 5cm以上 |
萎縮性瘢痕 | |
0点 | なし |
1点 | 1-2個 |
2点 | 3-5個 |
3点 | 6個以上 |
参考
リンク
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