問題
問題 51
44 歳、男性。頭部の皮内腫瘍の組織像を示す(図 25、図 26、図 27)。診断は何か。
1. Sebaceoma
2. Trichoblastoma
3. Basal cell carcinoma
4. Sebaceous adenoma
5. Sebaceous carcinoma
解答
問題 51
44 歳、男性。頭部の皮内腫瘍の組織像を示す(図 25、図 26、図 27)。診断は何か。
1. Sebaceoma
基底細胞様細胞が50%以上を占めるのでマクロでみると比較的青紫っぽい腫瘍に見える。ripple patternが見られることもある。
2. Trichoblastoma
毛芽腫にも脂腺分化を伴うことがある。この場合、毛髪ぽく分化しているところを探す。
3. Basal cell carcinoma
柵状配列、クレフト形成、ムチン沈着などがメインの所見。免染だとBerEP4が染まるので時に行われることがある。BCCに脂腺分化を伴うこともあるが、その他の所見がBCCとは異なっている。
4. Sebaceous adenoma
基底細胞様細胞が50%未満なので。マクロでみると白っぽい腫瘍に見える
5. Sebaceous carcinoma
脂腺分化を伴う上皮系の悪性腫瘍。核の大小異同、核分裂像が目立つはず、眼瞼脂腺癌と眼瞼外脂腺癌に分かれること、Muirr-Torre症候群との関連が大事
図27に脂腺分化している細胞が目立つので脂腺系の腫瘍と推測できる。図26から比較的左右対称で、きれいな腫瘍であり、図26,27からも細胞の大小異同や核分裂像も目立たたないので、sebaceous carcinomaは否定的。
脂腺系腫瘍まとめ
異所性 | 過形成 | 良性腫瘍 | 良性腫瘍 | 悪性腫瘍 | |
フォアダイス状態 | 脂腺増殖症 | 脂腺腺腫 | 脂腺腫 | 脂腺癌 | |
好発部位 | 口唇 頬 包皮 陰唇 本来脂腺が存在しない粘膜に脂腺が存在する状態 | 顔面 頭部 | 顔面 頭部 | 顔面 頭部 | 顔面 頭部 |
病変の主座 | 真皮浅層 | 真皮浅層 | 真皮浅層 | 真皮深層 | |
正常な脂腺、脂腺管 | 成熟した正常な脂腺小葉 | 成熟した脂腺 基底細胞様細胞が50%未満 | 多結節病変を形成 基底細胞様細胞が50%以上 脂腺分化は少し 脂腺管の分化のほうが目立つ | 面皰様の壊死 脂腺小葉は不明瞭 高度の異型性あり | |
表皮や 毛包との 連続性 | 毛嚢と関係なく脂腺が直接表皮に開口する | 毛包と連続 脂腺と脂腺管は保たれる | 表皮に開口 脂腺管を介さず表皮に露出 | なし |
古い用語だと脂腺分化を伴う基底細胞癌においてsebaceous epithelioma と言ったりもしていたようだが、現在ではほぼ使用されていない用語となっている。
眼瞼脂腺癌と眼瞼外脂腺癌
眼瞼脂腺癌 | 眼瞼外脂腺癌 | |
75% | 25% | |
マイボーム腺由来:50-70% ツァイス腺由来:4-10% | ||
病変が小さく異型性が乏しくとも 再発転移が高率におこる | 再発転移の可能性は低い |
Muir-Torre症候群
脂腺系腫瘍を見たら、一度は思い浮かべておくべき疾患
遺伝形式 | 常染色体優性遺伝 |
原因遺伝子 | hMSH2(human mutS homolog 2) hMLH1(humanmutL homolog 1) hPMS1(human postmeiotic segregation 1) hPMS2(human postmeiotic segregation 2) hMSH6(GTBP:GT mismatch binding protein) hMSH3(human mutS homolog 3)など |
原因 | DNA ミスマッチ修復の異常 |
Muir-Torre 症候群の診断基準 |
Group A:脂腺腺腫、脂腺上皮腫、脂腺癌、脂腺分化を伴うケラトアカントーマ Group B: 内臓悪性腫瘍 Group C:多発性ケラトアカントーマ、多発性内臓悪性腫瘍、Muir-Torre 症候群の家族歴 判定 診断には GroupA と GroupB からそれぞれ 1 つ以上またはGroupC の 3 つすべてを満たすこと.以下のような発症しや すい要因がないこと. 眼瞼の脂腺癌に関連する幼少時の網膜芽細胞腫の放射線治療歴,AIDS,カポジ肉腫(カポジ肉腫もリンパ腫も内臓悪性腫瘍には入れない),脂腺母斑(脂腺上皮腫のような新生物になる傾向がある). |
参考
みき先生の病理診断ABC②付属器系病変
Muir-Torre 症候群の父子発症例―免疫組織化学検査の有用性―
リンク
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