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令和4年度 2022年度 皮膚科専門医試験 解答解説 問題42

問題

問題 42
 色素失調症について正しいものはどれか。2 つ選べ。
1. 肺病変が約 30% に生じる。
2. 患者の 95% 以上が男子である。
3. 血液、組織の好中球増多を伴う。
4. NEMO/IKBKG 遺伝子の変異により発症する。
5. 出生時あるいは出生後早期に紅斑を伴う小水疱が見られる。

解答

問題 42
 色素失調症について正しいものはどれか。2 つ選べ。
1. 肺病変が約 30% に生じる。
色素失調症では肺病変はない。歯牙の異常、骨形成不全、眼の異常、脱毛、爪欠損、精神発達遅滞などが見られる。
2. 患者の 95% 以上が男子である。
X染色体優性遺伝なので、ほぼ女児に発症する。もし男児に発生している場合はモザイク変異ないしクラインフェルター症候群の場合が考えられる。
3. 血液、組織の好中球増多を伴う。
好酸球が多くなる。そのメカニズムはまだ不明。
4. NEMO/IKBKG 遺伝子の変異により発症する。
5. 出生時あるいは出生後早期に紅斑を伴う小水疱が見られる。

色素失調症について

疫学出生10万人あたり0.7人
男女比は1:20
遺伝形式X染色体優性遺伝
原因IKBKG遺伝子 (Xq28)(以前はNEMO遺伝子といっていた)
臨床症状皮膚(100%)
歯(90%):萌出遅延、歯牙欠損など
毛髪 (50%):びまん性円形脱毛症
骨格(40%):後側湾症
眼(35%):色素性網膜症、網膜血管病変
中枢神経(30%):精神発達遅滞、痙攣発作
など

IKBKG遺伝子がNEMO(NF-κB essential modulator)タンパク (IKKγ)を作るIKKα、IKKβとともに3つそろって機能しNF-κBを活性化させる。IKBKG遺伝子に変異があるとNF-κBの活性が阻害され、様々な症状を引き起こす。

診断

A.症状

  • 主要徴候
    1. 顔以外に出現する紅斑:生後1週から4ヶ月の間に出現し一般に線状に分布する。後に小水泡となる。
    2. 線状、渦巻状の色素沈着:生後4ヶ月から16歳の間に見られる。主に体幹に、ブラシュコ線に沿って出現し思春期に消退する。
    3. 線状または斑状に脱色し萎縮した皮膚:思春期から成人期に見られる。
  • 副徴候
    1. 歯牙異常(歯牙欠損、部分または完全無歯症、小歯症、歯牙形態異常等)
    2. 毛髪異常(脱毛、羊毛状の毛)
    3. 爪の異常(隆起状または陥没状の爪、爪鉤弯症)
    4. 網膜周辺部の血管新生
B.検査所見

なし

C.遺伝学的検査等

IKBKG遺伝子に変異を認める

D.鑑別診断

水痘。水痘ではブラシュコ線に沿うことはない。

E-1.確実例

主要徴候のうち少なくとも一つを満たし責任遺伝子(IKBKG遺伝子)に変異を認める場合は色素失調症と確定診断される。
変異を認めない場合もあり、その場合は主要徴候のうち項目2と副徴候のうち一つ以上を満たす場合を色素失調症と診断する。

E-2.疑い例

なし

皮膚の経過

皮膚症状は一般的に4段階で進行する。(PMID: 24626645より)抜粋

第1期(炎症期、水疱期):ブラシュコ線に沿って紅斑、丘疹、小胞および膿疱が発生し、直線的に分布する。これらの大きさは 1 mm から 1 cm 以上までさまざま。病変は主に四肢にだが、体幹、頭、首にも発生することも。水疱期は患者の 90 ~ 95% で発生し、ほとんどの患者 (90% 以上) では、病変は出生時に存在するか、生後 2 週間以内に発症し、その後生後 4 か月までに消失する。場合によっては、生後 1 年以降、または母体内で発症することもある。

第2期 (疣状苔癬期):紅斑性基部上に線状に配列されたプラークおよびいぼ状の丘疹が特徴で、ブラシュコの線に沿っている。病変は四肢や体幹に発生するが、頭や首にも発生する。その位置は、ステージ 1 での以前の炎症の分布と一致する場合と一致しない場合もある。いぼ状の病変の発生が症例の 70% で報告されており、ほとんどの患者では、2~6 週間以内に発症し、通常は生後 6 か月までに消失する。いぼ状の病変が成人期まで持続し、手のひらや足の裏に好発する線状の疣贅状の線条の形で現れることがある。

第3期(色素沈着期):茶色がかった色素沈着を伴う線状または輪生状の病変がみられ、皮膚委縮を伴うことがある。第3期は患者の 90 ~ 98% で見られる。体幹と四肢におおく発生するが、頭と首の領域にも存在する。乳首、腋窩、鼠径部も色素沈着過剰の影響を受ける場合がある。これらの病変の位置は、初期段階で以前に皮膚病変があった領域と必ずしも一致しない。これらの病変は通常、生後数か月間で発生し、思春期にゆっくりと消えるが、一部の患者では、特に腋窩や鼠径部に色素沈着過剰が約40歳まで残ることがある

第4期(色素消退期):ステージ 4 は、皮膚萎縮または低色素沈着として知られ、低色素沈着、萎縮、および毛の欠如が特徴。下肢で最も見られる。これらの病変は通常、思春期に発症し、成人期まで持続し、改善しない場合もある。患者の 30% ~ 75% に観察される。

ステージIIIIIIIV
名前水疱、炎症期疣状苔癬期色素沈着期色素消退期
発生時期2w-4m2~6w-6m数m-思春期ごろ思春期-成人期
発生割合90-95%70%90-98%30-75%
好発部位四肢
体幹
頭部

四肢
体幹
頭部

四肢
体幹
頭部

乳首
腋窩
鼠径部
下肢
臨床紅斑
丘疹
膿疱
疣状の丘疹線状または輪状の色素沈着
皮膚委縮
色素脱失
皮膚萎縮
毛の欠如
その他Blschko線に沿うBlschko線に沿う
以前発生したところと一致しないことも
以前発生したところと一致しないことも

参考

Incontinentia pigmenti

色素失調症

色素失調症Howto

リンク

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