問題
問題 41
生後 1 か月の女児。図 20 の皮膚所見で受診した場合、最も適切な初期治療はどれか。
1. 経過観察
2. 切除手術
3. レーザー照射
4. ステロイド内服
5. プロプラノロール内服
解答
問題 41
生後 1 か月の女児。図 20 の皮膚所見で受診した場合、最も適切な初期治療はどれか。
1. 経過観察
2. 切除手術
学童期くらいまでに手術療法の積極的な適応になる症例は少ない。通常はレーザーやβブロッカー治療を行い、改善に乏しく減容量術が必要な際に、学童期以降に考慮される
3. レーザー照射
プロプラノロール内服症例ではレーザー照射を併用することが多いく、併用のほうが治療効果、治療機関ともに良好
4. ステロイド内服
プロプラノロールが保険適応になる前は使用されていた。ステロイド内服自体の有効性は示されているが、ステロイドのよくある副作用が出たり、小児に内服させるので成長障害が出たりするので、プロプラノロールのほうが優先度は高い。潰瘍形成している場合の推奨度はDとなっている
5. プロプラノロール内服
顔面の広範囲な病変に対してはプロプラノロール療法が推奨される。生後6か月未満で治療を開始すると効果が高くなり、生後 12〜15 ヵ月未満の間に治療を終了すると再増大のリスクが低くなる可能性がある。生後5w未満の治療は効果不明。
診断は乳児血管腫またはイチゴ状血管腫。古くは自然消退するため経過観察でよいとされていたが、消退する際に瘢痕となってしまうため、現在では早期の治療介入が望ましいとされている。
イチゴ状血管腫/乳児血管腫について
有病率 | 全出生の0.8-1.7% |
女児、早期産、低出生体重児に多い | |
発生部位 | 頭頸部:60% 体幹:25% 四肢:15% |
臨床病型 | 局面型 腫瘤型 皮下型 混合型 欧米では表在型、深在型、混合型などと別れる |
経過 | 発症:生後2-4w 増殖のピーク:5-6mごろから1yくらいまで 自然消退:5-6yごろに瘢痕となって消退 |
その他 | 乳児血管腫の内皮細胞でGLUT-1発現亢進、その他の先天性血管腫と鑑別に有用 |
治療 | プロプラノロール:A1 イミキモド:B2 圧迫療法:D2 冷凍凝固:C2 潰瘍形成時 プロプラノロール:B チモロール外用:D 抗菌薬内服:D ドレッシング剤:D レーザー治療:D ステロイド全身投与:D |
プロプラノロール療法の適応
<プロプラノロール療法が推奨される乳児血管腫>
1.生命にかかわったり機能障害が懸念される場合
・声門部や気道に生じた場合(気道閉塞)
・眼瞼・眼窩内に生じた場合(視覚障害)
・内臓(肝臓など)に生じた場合(血小板減少,うっ血性心不全)
2.潰瘍を形成している場合(疼痛,哺乳障害)
3.顔面の広範な病変の場合
4.増殖が急激な場合
<プロプラノロール療法が必要なことがある乳児血管腫>
1.腫瘤型
2.露出部にある場合
<経過観察でよい乳児血管腫>
1.瘢痕が残っても気にならない部位の局面型乳児血管腫
2.瘢痕が残っても気にならない大きさの乳児血管腫
3.明らかに退縮期に移行した乳児血管腫
使用にあたり、小児科、循環器科との連携が必要。初回投与は1w程度入院して問題なければ外来で維持療法
プロプラノロール療法の使い方
1mg/Kg/day-3mg/Kg/day 朝夕食後で使用
1mg/Kg/dayから開始し、2日以上開けて1mgずつ増量、3mg/Kg/dayで維持する
プロプラノロールの有害事象
1)低血圧(0.9%),徐脈(0.5%),房室ブロック(0.2%)
2)低血糖(0.5%)
3)気管支痙攣(0.2%)
4)高カリウム血症(頻度不明)
5)無顆粒球症(頻度不明)
ほかにも睡眠障害,悪夢,傾眠,喘鳴,下痢,食欲減退,肝機能障害,末梢冷感などがある
早産児の場合
修正 5 週以降,体重 1,500 g まで待機した上で通常1~3 mg/kg のところ 0.4 mg/kg か ら 1~2 週毎にゆっくり増量し 1.5 mg/kg ぐらいに留めるとしている。それまでは可能であればレーザー治療で待機とする (馬場ら、皮膚病診療、2021)
参考
積極的な治療介入が望まれる乳児血管腫へのプロプラノロール内服療法の運用テクニック
リンク
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