問題
問題 29
27 歳女性。既往にアレルギー性鼻炎がある。6 か月前より、下腿に紫斑が出現した。次第
に症状は増悪し、手指足指に壊死を伴うようになった(図 19a、図 19b)。下腿の病理組織像
を示す(図 19c、図 19d)。最も考えられる疾患に、保険適用がある生物学的製剤を選べ。
1. Rituximab
2. Belimumab
3. Anifrolumab
4. Omalizumab
5. Mepolizumab
解答
問題 29
27 歳女性。既往にアレルギー性鼻炎がある。6 か月前より、下腿に紫斑が出現した。次第
に症状は増悪し、手指足指に壊死を伴うようになった(図 19a、図 19b)。下腿の病理組織像
を示す(図 19c、図 19d)。最も考えられる疾患に、保険適用がある生物学的製剤を選べ。
1. Rituximab
リツキサンⓇ。適応疾患は多岐にわたるが、皮膚科だと尋常性天疱瘡or落葉状天疱瘡でも使うようになってきているので、使用方法なども覚える必要が出てきた。作用機序については2022-18の解説も参照
2. Belimumab
ベンリスタⓇ。Bリンパ球刺因子(Blys)を標的とする、SLEに対する治療薬
3. Anifrolumab
サフネローⓇ。これもSLEに対するモノクローナル抗体製剤、I型インターフェロン阻害薬
4. Omalizumab
ゾレアⓇ。抗IgEモノクローナル抗体。皮膚科では難治性の慢性特発性蕁麻疹に使用する。ほかにもステロイド抵抗性の気管支ぜんそくなどにも使用できる
5. Mepolizumab
ヌーカラⓇ。IL5に対する抗体製剤。今のところ気管支喘息と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に適応。IL5は、好酸球の分化、成熟、アレルギー性の炎症部位における好酸球の動員および活性化で重要な働きをする造血サイトカイン
病理のCで病変が真皮の中層-下層にあり、Dで好酸球を伴ったリンパ球組織球の塊があり、肉芽腫性疾患であることが想像できる。病理からは壊死性の血管炎かどうかはっきりしないように思えるが、臨床写真で壊死があるのであまり重要視しなくてよいと思います。
アレルギー性鼻炎の既往と、臨床病理と合わせてEGPAであるという診断はそんなに問題ないんじゃないかと思います。最近では生物製剤が数多く作られているので、どの薬剤に適応があるかなどを新規に覚えるのは大変なので、薬説の時にアップデートするのが一番無駄がないかと思います
好酸球性肉芽腫性多発血管炎 eosinophilic granulomatosis with polyangitis, EGPA, Churg-Strauss症候群,
ひと昔前は Churg-Strauss症候群として覚えていたが、2012年の国際会議で名前が変更になった。様々な理由があるだろうが、その発端となったWegener肉芽腫症について、もともとのDr Friedrich Wegenerがナチ党員でったために、名称を変更することが検討されるようになった。血管炎の類縁疾患は人名を関するものが多いため、これを契機に、病名に人名を関することを避け、病態生理を表わす名前に変更するような流れが生まれたとのこと
主要臨床所見 | (1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎 (2)好酸球増加(末梢血白血球の10%以上、又は1500/μ L以上) (3)血管炎による症状:発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6か月以内に6kg以上)、多発性単神経炎、消化管出血、多関節痛(炎)、筋肉痛(筋力低下)、紫斑のいずれか1つ以上 |
臨床経過の特徴 | 主要臨床所見(1)、(2)が先行し、(3)が発症する。 |
主要組織所見 | (1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性又はフィブリノイド壊死性血管炎の存在 (2)血管外肉芽腫の存在 |
診断 | (1)Definite (a) 1.主要臨床所見3項目を満たし、かつ3.主要組織所見の1項目を満たす場合 (b) 1.主要臨床所見3項目を満たし、かつ2.臨床経過の特徴を示した場合 (2)Probable (a) 1.主要臨床所見1項目を満たし、かつ3.主要組織所見の1項目を満たす場合 (b) 1.主要臨床所見を3項目満たすが、2.臨床経過の特徴を示さない場合 |
参考所見 | (1)白血球増加(≧1万/µL) (2)血小板増加(≧40万/µL) (3)血清IgE増加(≧600 U/mL) (4)MPO-ANCA陽性 (5)リウマトイド因子陽性 (6)(画像所見上の)肺浸潤陰影 |
この診断基準では病理所見を満たさなくとも、EGPAの臨床のみによる確定診断は可能である、ということがわかる。
参考
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