SNSフォローボタン
KIをフォローする

令和4年度 2022年度 皮膚科専門医試験 解答解説 問題26

問題

問題 26
 真菌を同定する特殊染色はどれか。2 つ選べ。
1. PAS
2. Gram
3. Grocott
4. Ziehl-Neelsen
5. Warthin-Starry

解答

問題 26
 真菌を同定する特殊染色はどれか。2 つ選べ。
1. PAS
リンパ球やムコ多糖類を染める。多糖類中のグリコール基が過ヨウ素酸によって酸化されアルデヒド基2個に変化、これにSchiff試薬中の塩基性フクシンが反応し、赤色の物質を生成する。真菌の細胞壁はグルカン、キチンなどの多糖類で構成されている。一方で細菌類の細胞壁はペプチドグリカンが主成分なので染め分けることができるはず。ちなみに血球のばあいは内部のグリコーゲンに反応している

2. Gram
一般的な細菌染色、以下参照
3. Grocott
1946年にGomoriによりグリコーゲンやムチンを染めるGomori’s methenamine-silver nitrate
technic(GMS)染色が報告され、1955年にGMS染色に変法を加えた方法がグロコット染色と呼ばれる。真菌中の多糖類をクロム酸で酸化し、生じたアルデヒド基にメセナミン銀を反応させ金属銀として菌体を黒色~黒褐色に染まる。グロコット染色ではバックグラウンドの非特異的染色が少ないかつ、PAS染色で疎もあらない死菌、放線菌、ノカルジアなども染まる。

4. Ziehl-Neelsen
抗酸菌を染める際に使用する。mycobacterium属の細胞壁は資質に富む分厚い細胞壁を有するため、色素の通過が妨げられるため、グラム染色などでは染まりにくい。このため染める際には加熱したり、触媒を加えたりする。染まった後に酸やアルコールの処理を行っても脱色に対して強い抵抗を示す。このためmycobacterium属は抗酸菌と呼ばれる。
5. Warthin-Starry
スピロヘータの検出、梅毒のTreponema pallidum、マダニに媒介されるライム病のBorrelia burgdorferi、ピロリ菌などを検出する。

深在性真菌症などの疑いの際は病理レポートでもPASとgrocottはセットで染色されていることが多いと思います。

Gram染色

  1. 検体をスライドガラスにおく
  2. ライターやエタノールなどでスライドグラスに細菌を定着させる
  3. クリスタルバイオレットをかけると、グラム陰性陽性かかわらず青-青紫に
  4. ヨウ素液を振りかけてヨウ素+クリスタルバイオレット複合体を形成、分子量が大きくなり、色素が不溶化する
  5. エタノールなどで脱色、ここで細胞壁のうすい菌は損傷し、細胞内の染色液は流出してしまう→グラム陰性
    ここで長時間反応させてしまうと、グラム陽性菌の細胞壁も破壊してしまうので注意が必要
  6. ペプチドグリカンにより分厚い細胞壁を有する細菌は損傷せず、細胞内の染色液は流出しない→グラム陽性
  7. 赤色のフクシン液ないしサフラニン液を振りかけると細胞壁の薄かった細菌は赤色に染まる→グラム陰性

グラム陽性菌の細胞壁:一層の厚いペプチドグリカン層
グラム陰性菌の細胞壁:数層の薄いペプチドグリカン層+外側のリポ多糖を含んだ脂質二重膜(外膜)

Ziehl-Neelsen染色

抗酸菌の表面がミコール酸などによりおおわれているため、グラム染色で用いる水溶性のフクシン液では染まらない。そのため石炭酸を触媒とした石炭酸フクシンにすることで染まるようになる。染まった後に酸やアルコールで脱色されにくくなる。

  1. 標本を固定
  2. 石炭酸フクシンを振りかける→全部赤い
  3. バーナーで十分に加熱染色し放置冷却
  4. 3%塩酸アルコールで脱色→抗酸菌は脱色されない
  5. メチレンブルーで再度染色→脱色されたその他の細菌は青く染めなおされる

参考

グロコット染色

PAS(periodic acid Schiff)染色について

グラム染色

チール・ネルゼン染色

ワルチン・スターリー染色

リンク

試験問題のリンク図表のリンクです

解答一覧はこちら

コメント