問題
問題 19
64 歳、血液透析中の男性。最近誘因なく下腿に疼痛の強い、黒色壊死性の痂皮を付着した
潰瘍が多発してきた。趾端に潰瘍はない。皮膚生検で血管壁に石灰化を顕著に認めるが類上
皮細胞性肉芽腫および血管炎はない。臨床像(図 17)を示す。診断はどれか。
1. 壊疽性膿皮症
2. 末梢動脈閉塞症
3. Bazin 硬結性紅斑
4. 持久性隆起性紅斑
5. カルシフィラキシー
解答
問題 19
64 歳、血液透析中の男性。最近誘因なく下腿に疼痛の強い、黒色壊死性の痂皮を付着した
潰瘍が多発してきた。趾端に潰瘍はない。皮膚生検で血管壁に石灰化を顕著に認めるが類上
皮細胞性肉芽腫および血管炎はない。臨床像(図 17)を示す。診断はどれか。
1. 壊疽性膿皮症
好中球性の皮膚潰瘍なので、最初はニキビみたいな丘疹から始まり徐々に辺縁が堤防上に盛り上がり深い潰瘍を呈する。同心円状ではなく一方からえぐれていくことが多いので蚕食状潰瘍ともいう。水疱型、ストマ周囲型などいくつかバリアントがある。IBD、リウマチ、血液疾患、高安病などのの合併疾患は国家試験レベルで押さえておく
2. 末梢動脈閉塞症
好発部位はすねよりも手足の末梢が多い、一方静脈性は下腿にできやすい。血管の閉塞像はあるが、石灰化は見られないはず
3. Bazin 硬結性紅斑
病理ではlobular panniculitis, 皮膚結核なので乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認める
4. 持久性隆起性紅斑
潰瘍よりは紅色丘疹から線維化してかたくなってくるイメージ。病理では白血球破砕血管炎の所見がみられる。好発部位は下腿伸側
5. カルシフィラキシー
慢性血液透析、腹膜透析中の症例を中心として四肢、躯幹、手指、足趾などに急速に発症する、有痛性の紫斑に続く、難治性の皮膚潰瘍を主症状とする疾患。病理で血管壁の石灰化も見られる
透析中+難治性潰瘍=カルシフィラキシーも考慮する
カルシフィラキシー
慢性血液透析、腹膜透析中の症例を中心として急速に四肢、躯幹、手指、足趾などに発症する、有痛性の紫斑に続く、難治性の皮膚潰瘍を主症状とする疾患
透析患者の血管壁石灰化はほぼ必発だが、その中の限られた症例に発症する
疫学
透析患者人口10万人対3−4人/年
男女比 1:1だがやや女性に多い傾向がある
臨床症状
①慢性腎臓病で透析中、または糸球体濾過率15mL/min以下の症例。
②周囲に有痛性紫斑をともなう2カ所以上の皮膚の有痛性難治性潰瘍。
③体幹部、上腕、前腕、大腿、下腿、陰茎に発症する、周囲に有痛性紫斑をともなう皮膚の有痛性難治性潰瘍。
皮膚病理所見
皮膚生検は、可能な場合に実施する。臨床症状の2項目を満たす場合、他の疾患との鑑別困難な場合は、特に皮膚生検を行うことを推奨する。特徴的な皮膚生検所見は下記の通りである。
皮膚の壊死、潰瘍形成とともに、皮下脂肪組織ないし真皮の小~中動脈における、中膜、内弾性板側を中心とした石灰化、および、浮腫性内膜肥厚による内腔の同心円状狭窄所見を認める。
注:特に潰瘍、紫斑が極めて強い疼痛をともなうことは重要な症状である。
危険因子
ワルファリン内服で約8倍発症しやすいとのこと
参考
あたらしい皮膚科学
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