研究を続けていると、海外のラボとコラボすることも多々あり、その際には検体を日本から海外へ郵送することが必要になる場合があると思います。しかしながら、どうやって送るかノウハウがないと初手から躓くと思いますので、参考にしてください。今回は細胞を海外のラボに送ったときの話です。
MTAに抵触するかどうかを確認する
細胞を購入したときにMTAを締結していると思います。通常は遺伝子改変などを行っていない細胞株を継代しただけの細胞は送れないことが多くて、遺伝子改変などを行った細胞は送ることが可能だと思いますが、購入元に確認が必要です。
自分はATCCから購入した細胞を使用していたので以下の記載がありました(Material Transfer Request)。基本的には非営利目的に限定されるのでアカデミアならそんなに問題にならないと思います。大まかにまとめると以下のような感じです。
事前連絡不要の場合
以下については事前の連絡は不要ですが事後でも連絡しておく必要があります
- 同一ラボでの受け渡し(研究プロジェクトに関連するもの)
- 研究プロジェクトを譲渡する場合
- プロジェクトを継続する人は書面での同意が必要
譲渡禁止の場合
- 同一ラボでの受け渡し(無関係な研究プロジェクト)
- 配布、販売、譲渡
- 未改変の細胞株の譲渡
日本の代理店に確認
日本の代理店に確認したところ ”Prohibited Transfers の項に記載がございますとおり、ATCC株(ATCCMaterial)及びATCC株を培養継代した物(Progeny)の第三者への移動は禁止されております。共同研究先にてATCC株をご使用される場合には、当該株をあらためて移動先名義にてご購入いただきますようお願い申し上げます。以下略”という回答でした。あと細胞を移動させる際にはこのリンクから本社に報告するとのことです。
このときに昔細胞を購入した番号などを記載する必要があります。なかったときはどうなるかちょっとわかりませんが、出どころのわからない細胞は使わないで、新しく購入したほうが無難かもしれません。
フォームに送ったその日に本社から連絡が来て問題ない旨を確認できました
外注先を探す
細胞を郵送して良いことが確認できたら次は業者の選定です。いろんな業者があるかと思いますが自分はFedeXを使用しました。
今回は細胞の発送なので、ドライアイス発送ができるところで代表的なところの見積もりを取ってみました。どちらも問い合わせると比較的早く、時間帯にもよりますがその日のうちに連絡が来ます。
World Courier
温度管理などの専門的に郵送している会社。見積もりは15x15x10cmまでは35万円で対応のことでした。かなり信頼性が高く、天候での遅延や、税関で捕まったりしても安心とのこと。値段さえ許せばここが一番良いかもしれないです。
Fedex
海外から細胞を購入したりするとfedex経由でしばしば送られてくると思います。日本からの発送に限り日本法人の独自サービスでドライアイスを途中で追加してくれます。新木場で5Kg (+5000円)、ドイツで10Kgドライアイスの補充があります。合計で23万くらいの見積もりでした
細胞が到着したとき
結局税関で捕まることもなく木曜発送ー火曜日着となりました (最速は月曜着と言われましたが少し遅れたようです)。ドライアイスは3Kgほど残っていて、チューブが溶けている感じもありませんでした。日本からアジア諸国であれっばリアイスがなくても大丈夫かもしれませんが、欧米諸国に発送するとなると、ドライアイスの補充がないと、サンプルがだめになってしまう可能性があるかと思いました。
大変だったところ
着払い指定ができないとのことで、当初日本でもと同僚に建て替えてもらおうとしていたのですが、最終的には海外からの入金も可能とのことでインボイスを受け渡し先のラボに送ることで解決しました。今回はインボイスの請求書先が日本になってしまい、支払い者と請求先が異なってしまうので、研究費の処理が問題ないかは確認する必要があります。
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