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尋常性疣贅のガイドライン2019 治療の抜粋

いぼは日常診療でよく見られる疾患であり、どこの皮膚科へ行ってもとりあえずは液体窒素療法を繰り返しやっていく、ということが多いと思います。真面目に定期的に通院しても治らないことも多く、非常にコモンであるが治りにくいもの、という認識がある。

過去に英文ベースではいくつかガイドラインとされるものがpublishされており、2019年に本邦でも尋常性疣贅の治療ガイドラインが制定されました。全部語ると長いので今回はガイドラインに記載のある治療を抜粋してみたいと思いますので、今後の診療の参考になればと思い記載いたします。

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他のガイドラインも解説したりしています。

間違いなどあればコメントで教えてください。

物理的治療

液体窒素凍結療法 A

イボの治療の第一選択として最も頻用されるが、全然効果がない症例もあると思います。やり方にも術者の差が出やすく、疼痛を伴うため、患者が我慢できるかにも依存する。治療痕も残しやすいので顔面には使いにくい。

英国のガイドラインには,通常の手技について,周囲に凍結された halo ができる状態を 5~30 秒維持する,2~3 週毎に施術し,疣贅の消失またはおよそ 6 回までを目安とするとされる

副作用として、疼痛、水疱、色素沈着、色素脱失

禁忌としてクリオグロブリン血症が挙げられている

電気凝固 B

一部のレビューではサリチル酸やトリクロ酢酸よりも消失率が高いとしている。電気メスはクリニックにも止血用としておいてあることが多い。瘢痕を残しやすい

レーザー B

保険適応外だが、各種レーザー照射のレビューである程度有効性が示されている。煙にウイルスが含まれるので、十分な換気ないし吸煙器が必要

CO2レーザー B

保険適応外。クリニックでも所持していることが多い。爪囲、爪下のイボに対し71%-80%の奏功率あり。液体窒素で難治の際は考慮して良いが、爪の変形などの副作用あり。自分が過去に治療した 感じではそれなりに効果があったと感じています。

Er:YAG レーザー C2

単独では再発率も高く、保険適応外。消失率72%だが、3ヶ月後の再発率が24%とやや高い。使用する場合には別の治療と併用する。

Nd:YAG レーザー B

保険適応外。46-100%の消失率。標準治療で難治の際は考慮する。

PDL レーザー B

保険適応外。レビューによってまちまちだが、標準治療と同等以上に効果が期待できるため、標準治療が奏功しない場合は考慮

外科的切除 C1

イボの数が1-2個であれば局所麻酔下で切除しても良い。難治な比較的小さいイボに対しては有効であると思われ、即効性も期待できる。機能的に問題が生じうる場合は他の治療を検討

光線力学的療法 C1

報告は多数あるものの、光感受性物質と光線の組み合わせが多数あるため単純比較できないとするが、過去のレビューでは有効性ありとされている。過去のヨーロッパのガイドラインでは推奨度Bであったこともある。治療可能施設では検討しても良いかもしれない

イボ剥ぎ法 C1

外科的切除の一つ。海外のレビューでは記載がないのでエビデンス自体は乏しいが保険適応あり。自分が過去に行った限りでは何人か再発した人もいましたが、全体的には難治の大きなイボも再発なく経過していたかとおもいました。

超音波メス C1

有効な可能性があるが報告が少ない。

化学的治療法

サリチル酸外用 A

プラセボに対して1.6倍の治癒率、かkのどのガイドラインでも推奨度は高く設定されている。よく処方することがあるサリチル酸ワセリンは10%のことが多いが、海外のレビューでは20%以上で使用していることが多い。そのため日本では50%サリチル酸配合のスピール膏を使用することになると思われるが、全身に多発していると使いにくい。難治な手掌足底には良い適応であろう

モノ、トリクロル酢酸外用 C1

保険適応外、概ね液体窒素と同等の奏功率だが、痛みはこちらのほうが少ないと思われるので。小児などにはよく使っていました

グルタールアルデヒド外用 C1-2

システマティックレビューでは触れられていない。いくつかのケーススタディで有効性が示されているが、無理に人体に使用しなくていいと思う。

フェノール外用 C1

イボに対しては保険適応外。奏功率も副作用も液体窒素と同程度だが、奏功する可能性はあるので、おいてあれば、別のオプションとして考慮

薬理的治療法

活性化ビタミンD3外用 C1

ケースシリーズレベルでの報告で、有用性はあるとされる。爪病変にODTすると結構効果がある印象です。

ブレオマイシン局所注入療法 C1

走行率は14ー99%とレビューによりまちまちだが、液体窒素より効果があるとするレビューもある。爪病変への注入は骨融解をきたすため避けるべきとされる

5-FU外用 C1

5FUの投与方法として外用(5% 濃度のゲルで 1 日 1,2 回 6 週間外用)と局所注射(3 mg/mL で週 1 回 6 週間まで)の試験がある。2000年代のの試験で外用はプラセボより有効性が高いとしている

ポドフィリン外用 C2

有効性の評価は乏しいとしている。奏功したとする症例も単独ではなくサリチル酸などと併用したものであった。

レチノイド外用 C1

過去のレビューでは無治療よりも奏功率は高かったが、疣贅と角化病変を同時に評価していた。他のレビューでは例えば0.1% アダパレンゲルを 1 日 2回外用しラップで密閉 vs 凍結療法では消失までの期間がアダパレンのほうが早いとしている

レチノイド内服 C1

多くの症例で有効なことがある。副作用として口唇炎や皮膚の乾燥に加えて,血清中総コレステロール,中性脂肪,AST,ALTなどがある。疣贅が多発していて局所療法でキリがないときには試してみる。

免疫学的治療法

ヨクイニンエキス内服 B

保険適応あり。胃部不快感,下痢などの消化器症状やかゆみなどと副作用は軽め。若年での有効率が高い一方,成人では低いとされる。投与量は成人で 1 日 18 錠あるいは 3~6 g を分 2~3 で内服させるため、若干続けるのが大変

接触免疫療法 B

DPCP.やSADBEなどが多くのレビューで全体的に高い奏効率を出しているし、小児でも使用できるのは助かる。70ー80%の奏功率、個人的には困ったときにこれを使用すると結構良くなったりします

イミキモド外用 C1

レビューでは50%強で奏功するとされるが、使った感じではこれが一番良かった。難治症例に試してもよいと思われる。

シメチジン内服 C1

ファーストラインとはならないが、小児には試してもよいとする。単独では液体窒素に劣るため何かと併用すればいいかもしれない

インターフェロン局所注入療法 C2

一部のレビューで有意な効果なしとされる。

その他

プラセボ療法 C2

何らかの理由で実薬が使用できない場合などに,プラセボが選択肢に上がる可能性がある。多くのレビューでプラセボと比較しており、プラセボでも一部の症例で改善が見られている。

暗示療法 C2

暗示療法についてのエビデンスはない。液体窒素を続けていて、”すごく良くなってますねー”と褒めながら治療を続けていくと、治りが早いような気がしています。

アルゴリズム

尋常性疣贅のアルゴリズム

足底疣贅のアルゴリズム

多発性疣贅のアルゴリズム

小児疣贅のアルゴリズム

最後に

クリニックによって使用できる治療が限られますので、患者と担当医の間でよく相談することが必要です。

参考

尋常性疣贅診療ガイドライン2019

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